在来知と近代科学の比較研究

日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(A) 25244043

2015年度 第2回全体研究会

在来知と近代科学」(IK&MS)2015年度第2回全体研究会
日時:6月19日(金)12:00pm~17:00pm
場所:大阪大学・豊中校舎・言語文化研究棟2F大会議室
http://www.lang.osaka-u.ac.jp/lc/about/access

 

<スケジュール>
(1)13:30pm~15:00pm 「日本刀をめぐる科学と「信念」:科学者と愛好者の間で」青木啓将(早稲田大学)
(2)15:15pm~16:00pm コメント:飯田卓(国立民族学博物館)、中谷和人(京都大学)
(3)討論:16:00pm~17:00pm

 

<要旨>
「日本刀をめぐる科学と「信念」:科学者と愛好者の間で」   青木啓将 (早稲田大学)

本発表は、日本刀の生産・流通・受容における在来の民俗知識・技術と科学の 接触面に目を向け、分岐、再編される科学と在来知による社会・文化の 生成に ついて考える。
日本刀は、一般的に伝統工芸という既成の枠組みで捉えられがちである。しか し、明治以降の日本にもたらされた科学の日本刀業界への接近を振り返 るのな らば、日本刀は在来知と科学が相互に乗り入れる領域にこそ位置づけられるべき ものである。たとえば、日本にもたらされた近代鉄鋼業と冶金学 は、「伝統」 的製作技法に対する科学的解釈を提供するとともに、軍刀開発を通して、「伝 統」的製作技法とはオルタナティブな製作技法の具現化をも たらした。さら に、実用性や鑑賞美、刀に向けられる神聖視に関する既成の価値・観念を刺激し てきた。
とはいえ、現在の日本刀業界の大勢は、一方で、科学の進展の恩恵を一部で享 受しつつも、他方ではすれ違う。長年刀を作り、あるいは収集してきた 者たち の一部には、この大勢を「刀の世界」、すなわち、刀を愛でる者たちの「世界」 として語る。もっとも、刀を愛でる者たちは、普及活動において 自身の「信 念」を「刀の世界」のソトへ伝えようとするとき、科学の恩恵がもたらす価値観 や感性の変容の萌芽に直面する。このとき、人と刀はどのよ うに対峙し、「刀 の世界」は揺さぶられるのだろうか。科学と在来知の折衝を通した感覚・感性の 統制とその揺るぎについて論じたい。

 

<資料>
「日本刀をめぐる科学と「信念」:科学者と愛好者の間で」   青木啓将 (早稲田大学)