在来知と近代科学の比較研究

日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(A) 25244043

Research Clusters

本研究は、フィールド調査によって明らかにされる具体的な事例を共通の対象に、在来知と近代科学の関係という主題に関わる6つの分野(以下の研究組織欄を参照)の学際的な協力を行い、この主題に関して多角的な理論的視座から実証的なフィールド調査に基づく一般理論の構築を目指すと同時に、事例ごとの固有性を明らかにする点に特徴がある。そのため、本研究は、(1)理論研究班と(2)フィールド調査班の二班の間での相互的なフィードバックを軸に進められる。

(1)理論研究班
フィールド調査班から提示される事例をそれぞれの理論的視座から検討するとともに、相互の理論的立場に対して批判的に検討し合うことで理論化を進める。

①人類学における在来知研究:大村敬一(代表者)、Marie Roué(協力者)
②科学人類学:山崎吾郎(分担者)、Casper Jensen(協力者)
③STS(科学技術論):森田敦郎(分担者)
④科学哲学:近藤和敬(分担者)
⑤相互行為論(知識の共有プロセス):菅原和孝(分担者)
⑥情報科学:森洋久(協力者)

(2)フィールド調査班
それぞれの領域で在来知と近代科学の関係に関するフィールド調査を行い、理論研究班に共通の研究対象を提示するとともに、理論研究班から提示される一般理論をそれぞれの領域で実証的に検証しつつ、事例ごとの固有性を明らかにしてゆく。

①カナダ極北圏での野生生物の利用と管理(イヌイトの知識):大村敬一(代表者)
②ボツワナでの野生生物への認識と実践(ブッシュマンの知識):菅原和孝(分担者)
③オーストラリアでの土地の利用と管理(アボリジニの知識):窪田幸子(分担者)
④マダガスカルでの水産資源の利用と管理(ヴェズの漁法):飯田卓(分担者)
⑤日本での水産資源の利用と管理(日本の漁村の漁法):飯田卓(分担者)
⑥タイの水資源の管理(伝統的な治水技術):森田敦郎(分担者)
⑦インドの生物資源探索(ウッタラカンド州の農民の知識):中空萌(協力者)
⑧グリーンランドでの異常気象対策(イヌイトの知識):スチュアート ヘンリ(協力者)
⑨北欧の牧畜(サーミの知識):Marie Roué(協力者)
⑩地図製作(日本と世界の古地図):森洋久(協力者)

(3)調整と総括
理論研究班は年二回の班会議と年一回の国際ワークショップを開き、フィールド調査班から提示される事例の検討という共通の問題に取り組むかたちで密接に連携し、フィールド調査班は理論研究班から提示される一般理論の検証という共通の問題に取り組むかたちで密接に連携する。二つの班は年一回の全体研究会を開き、相互の成果に対して集中的な討議を行うことで、相互の成果をフィードバックし合いながらそれぞれの研究を進める。この密接な連携と協力を通して、在来知と近代科学の関係について事例を超えた一般理論を構築するとともに、事例ごとの固有性を明らかにしてゆく。